10億人

執筆者:伊藤洋一2000年1月号

 人は、電話がかかってくることを期待しながら、携帯電話を持つ。誰かが今、自分を必要としているのではないか、誰かが電話をかけてくるのではないか、と思いながら。 そんな人の数が、二〇〇二年には「十億人」になるという。世界最大の携帯電話会社、ノキア社のオリラ会長兼CEOが昨年十二月に発表した見通しである。 十億人! ベルリンの壁が落ちる前のOECDの全人口に匹敵する。現在、世界人口は六十億人だが、子供を除くとほぼ四人に一人の普及率になるというのだ。すさまじい商品である。 ちなみに、一九九九年末の世界の携帯電話普及台数は四億五千万台と、未だ五億台にも届いていない。だが携帯はインフラの整備が比較的容易なために、途上国では固定電話より普及が早いとの調査結果もある。 日本の携帯普及台数は約五千万台。世界でも有数の携帯電話王国である。その日本の切り札は「i」。ネット端末としての携帯だ。インターネットはPCの上で揺籃期を過ごし、携帯電話を主戦場にしつつあるのだ。 携帯をはじめとする情報通信関連株価は、行き過ぎかもしれない。しかし、この商品と、その関連ビジネスが持つ成長性とマスの力は、世界のネットシーンを変えるだろう。

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