新たなバブルの危うい足音

執筆者:2000年2月号

 歴史は繰り返すのだろうか。 日本経済は全体として、いまだ低迷から脱却できていないにもかかわらず、再びバブルの兆候が日本社会のいたるところに見られ始めた。 日経平均は一時2万円を突破。それ以上に注目されるのは、「ヤフー株1億円」に象徴されるネット関連株の急騰ブームである。それに伴ってにわか株長者が続出する現象は、「土地バブル長者」を輩出した80年代後半を彷彿させる。 周知のように、先のバブルが始まるきっかけとなったのは1985年だった。以後、株価は1989年末に史上最高値を記録するまで上昇を続けた。ところが、翌1990年からバブル崩壊のプロセスに入り、「失われた10年」と言われる低迷の90年代に突入。2000年を迎え、ようやく株が本格的に動きだしたのだ。 バブル発生から崩壊を経て15年。時代は一巡したのだろうか。このところ、さまざまなメディアでバブル時代の検証が行なわれているのも、新たなバブル発生の兆しを感じ取っているからに違いない。 まず何よりも、バブルの原点が1985年だったことを再確認することが大切だ。同年9月、G5で円高・ドル安を誘導する「プラザ合意」が成立したことが大きい。それにより円高不況を恐れた大蔵・日銀当局が、金融緩和に踏み切り、バブル発生の火を付けた。また、この年の4月、電電公社が民営化し、NTTが発足したことも忘れてはならない。民営化を受けて、87年2月にNTT株が売り出され、空前の「株ブーム」が起こったのである。

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