中国福建省アモイ市を舞台にした巨額密輸事件の捜査は、賈慶林・北京市共産党委員会書記周辺にまで及んでいる。賈氏は江沢民主席のかつての部下であり、まさに江主席の人脈にくさびを打ち込む勢いだが捜査は喬石前全人代常務委員長―朱鎔基首相―賈春旺公安相ラインの強力な後押しで進んでいるようだ。

 かねてより江主席との関係悪化が伝えられてきた朱首相は、昨年夏の北戴河会議で江主席との連携を修復したといわれているが、江主席の独善的な政治運営が強まるにつれ、牽制が必要との考えに傾いている模様。加えて、昨夏に朱首相の金融畑の人脈の朱小華・光大銀行頭取が汚職の疑いで更迭され、載相竜・中国人民銀行(中央銀行)行長も一時取り調べを受けるなどの揺さぶりを受けたことから、転復の狙いもあると見られている。

 朱首相はもちろん汚職追放への熱意が強いが、昨年、自らの権力基盤が切り崩され、思い通りの政策が取れなくなったことに危機感を募らせており、汚職追放を自らの勢力拡張にも利用しようという腹のようだ。そのため朱首相は、政治局内で「捜査が生ねるければ、三月の全人代が持たない」と捜査の強力推進を主張しているという。

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