サウジアラビアとの現行の権益協定延長がほぼ絶望的となったアラビア石油社内で、小長啓一社長、岡松壮三郎副社長の通産省出身コンビへの批判が吹き荒れている。「延長交渉の重要な局面で、小長社長はサウジ側の出方を見語ったケースが何回かあった」と社内の中堅幹部は指摘する。しかも「自らサウジ側に約束した鉱山鉄道プロジェクトの実現のために、通産省の権威を借りて日本企業に圧力をかけまくったことで財界内でアラ石シンパを次々に敵に回してしまった」と別の関係者は指摘する。

 アラ石は日本の他の石油開発会社と違い、純粋な民間会社。創設時から民間の良さを売り物にしていたが、サウジ、クウェートとの権益延長交渉のため通産省からわざわざ小長元次官を社長として招き、国の権威付けをした。そのリリーフ役が「試合をめちゃくちゃにした」(中堅幹部)だけにプロパー社員の怒りは収まらない。

 権益延長が果たせなかった場合には、今後のアラ石はサウジから原油一バレルあたり一―二ドルの手数料を得て操業する委託生産会社として生きる道も残されているが、いずれにせよ通産省出身のふたりの“戦犯”処分は避けられない情勢だ。

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