鉄鋼業界トップの新日本製鉄による業界再編のシナリオが進んでいる。経団連会長も務める新日鉄の今井敬会長は昨年十月の勉強会で「鉄鋼業界は新日鉄、川崎製鉄、NKKの三社高炉体制を考えている」(経団連関係者)と発言。その言葉通り、新日鉄はまず、シームレス(継ぎ目無し)パイプの過剰投資で約八百億円の有利子負債を抱える住友金属と同パイプ分野で提携した。その代わりに住金は和歌山の高炉二基を止め、本業の要となる圧延部門を新日鉄に事実上手渡した。

 また、新日鉄が神戸製鋼所から獲得を狙っているのはアルミ部門と、売電参入のために建設した二基の発電機だという。新日鉄は子会社のスカイアルミと古河電工を合併させて神鋼のアルミ部門を吸収し、発電所も傘下に収める考えのようだ。

 今井氏は経団連会長という立場上、産業界再編に向け「鉄鋼業界で再編を進めなければ、他の業界に示しが付かない」(前出の経団連関係者)と語っており、業界では三月末までに本格的な再編を仕掛けるのではないかとみられている。独禁法に抵触しないように川鉄、NHKを生かす形で、新日鉄は着々と一人勝ちの準備を進めているようだ。

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