近未来国家フィンランド

執筆者:2000年2月号

高度情報インフラが支える「ネット社会」の実像

[ヘルシンキ発]北欧の国フィンランドに、日本人はどんなイメージを持っているだろう。サンタクロースやムーミンの童話的なイメージかもしれないが、現実のフィンランドは、パソコンと携帯電話が広く普及した、高度の情報通信大国である。

 女性大統領が率いる小さな政府、高齢者が安心して暮らせる情報通信ネットワーク、税金は高いが豊かな住環境――フィンランドは、世界の大国が目指す近未来国家の姿を先取りしているとも言える。

携帯電話普及率八〇%

 フィンランドの首都ヘルシンキに住むマリアレーナ・クーシネンさんは、五十代の主婦。二人の子供は既に独立し、公務員の夫との二人暮らしだ。週末は郊外に建てたログハウスでのんびり過ごす。仕事は林業関係の会社の経理担当で、在宅勤務をしている。毎朝、パソコンを通じてホスト・コンピュータにアクセスし、その日の仕事をダウンロードする。

 クーシネンさんの会社では、後方部門の二〇%強が在宅勤務をしている。彼女が在宅勤務を選んだのは二年前。持病の喘息が再発し、冬の寒い時期の通勤がこたえたためだ。かかりつけの医師の診察もパソコンを通じて受ける。その日の症状を送信すると、医師からのアドバイスと処方箋が送り返されてくる。

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