ディスカバリー・チャンネル

執筆者:木下玲子2000年2月号

世界的に評価の高いドキュメンタリー専門番組がこだわったのは、徹底した質の向上だった「一九九七年――この年、世界各地で大規模な森林火災が頻発しました。こうした森林火災は、地球が長い時をかけて育んできた自然の豊かさを根こそぎ奪い取ってしまったのです」 男性の低音のナレーションがこう始めるのは、「燃えさかる地球」と題したドキュメンタリー番組である。九九年、「ディスカバリー・チャンネル」が世界に先駆けて、アジア太平洋地域から放映の口火を切った六十分番組だ。 冒頭のシーンでは、画面いっぱいに広がる抜けるような空の青さが目を射る。その青空を背景に、インドネシアのカリマンタンを流れる大河の川面を滑るように下ってゆく一艘の小舟が現れる。小舟から眺める岸辺の風景は、穏やかだが生活力に溢れていた。涼しげな簾の中から眠たそうな顔を覗かせる幼女。はしけの上にかがんでは川の水をすくい上げると頭や顔にかけ回して朝の水浴びをする女性。地上に残された最後の自然と呼ばれるカリマンタン降雨林。その森に寄り添うように形成されたタンジェニ・エスイ村で、人々は自然と共生しながら生活を営んでいる。 そこを山火事が襲ったのは九七年だった。これまでの山火事とは違っていた。インドネシアの軍隊が出動したが、火の手はおさまらない。国際社会が立ち上がり、各国の政府やNGO(非政府組織)はインドネシア政府に対して消火支援を申し出た。

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