こんなにも相撲が好きなシラク大統領

執筆者:西川恵2000年2月号

 七月に沖縄で開かれるサミット(主要国首脳会議)の理解と協力を得るため欧州を歴訪した河野外相は、一月十四日、フランスのエリゼ宮(仏大統領官邸)でシラク大統領と会談したが、良く知られた大統領の親日家ぶりがここでも如何なく発揮された。

「沖縄には二十年ほど前に行ったが、豊かな文化の地で、焼き物美術館が素晴らしく、料理も美味しかった。今度も沖縄伝統料理を食したいし、東京や京都、奈良にも行きたい。名古屋では大相撲も見たい。いつも日本に行くのは楽しく、帰りはつらい」

 さらには、つい数時間前に六日目を終えた初場所に触れ、「五勝一敗で五人の力士が並びましたね」と語った。びっくりしたのは河野外相である。

 シラク大統領の相撲愛好ぶりはつとに知られている。本場所が始まると、在日フランス大使館の広報部長オリヴィエ・バラ氏からエリゼ宮に、その日の取り組みの星取り表がファックスされる。日本とフランスの時差は冬季だと八時間。丁度、大統領が執務を開始する頃に手元に届くことになる。

 バラ氏は日本に赴任して一年半。弁護士から、外務省試験にパスして外交官に転じた。本省では武器輸出の許認可審査という難しい部署の責任者だったが、外交官として最初の任地である日本で相撲をカバーすることになるとは考えてもみなかったろう。

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