日本版“ニューエコノミー”の幻想

執筆者:杜耕次2000年2月号

 時ならぬネット株ブームに沸く証券市場。東証のベンチャー市場「マザーズ」も始動し、その勢いはとどまるところを知らない。だが、その市場運営や上場企業には不透明さが残る。この熱狂はニューエコノミーか、バブルの再来か――その実像に迫る。

 二月一日に景気拡大が史上最長の百七カ月目に突入した米国経済。その象徴であるニューヨーク株式市場の活況に便乗する形で、日本でも一夜漬けのネット株ブームが沸き起こっている。

 拓銀・山一ショックで日本経済が震撼した九七年十一月、孫正義社長の個人資産管理会社の含み損のウワサなども加わって千六百七十円にまで下落していたソフトバンクの株価は、現在(二月四日)十三万三千円にまで跳ね上がっている。そのソフトバンクが五一%出資する子会社ヤフー・ジャパンは一月十九日、日本の株式マーケット史上に残る「株価一億円」(額面五万円)の大台到達を果たした。

 さらに、携帯電話販売の法外ともいえるマージンで急成長した光通信は九九年末時点で、株式時価総額が六兆三千四百億円に急上昇。上場からわずか三カ月で、東証一部の時価総額ランキングでトップテン入りした。フォーブス誌は、光通信の重田康光社長がマイクロソフトのビル・ゲイツ会長や投資家のウォーレン・バフェットなどに次ぐ世界五位の富豪になったと報じた。

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