昨年後半以後、東京三菱、三和両行の間で、水面下の“忍び逢い”が続けられているという。金融関係者の間では、「合併に向けた下交渉」(ライバル都銀)という見方で一致している。

 三和は昨年、金融再生委員会が音頭をとったさくらとの合併交渉が難航した隙に、さくらを住友に奪われる苦い経験をしたばかりだ。三行統合、住友―さくらというメガバンクの誕生に対して「上層部には焦りがある」(三和関係者)という。もちろん、その事情は東京三菱も共通する。同行内部から役員たちの鞘当てが漏れ伝わってくるのも、そうした焦りの感情があってのことだろう。

 両行が役員レベルでの会合を行っていることは、関係者も否定しない。合併経験のある大銀行の幹部が「合併は、役員レベルの話し合いで信頼関係の基盤を築いて、最終的にトップ同士の手打ちとなる」と語るように、昨年来の動きは、合併への基盤作りという色彩が極めて濃いのである。

 そうした中で注目を集めているのが、昨年暮に行われた伊夫伎一雄、佐伯尚孝という相談役同士の会合だ。伊夫伎氏は、三菱銀行頭取時代にニューヨーク市場への株式上場や東銀との合併の下地を作った。今も隠然たる発言力を有する大物相談役だ。一方、三和の室町(鐘緒頭取)体制は「不祥事の責任を取り任期途中で頭取を退いた佐伯氏の非常時シフト」(三和関係者)といわれる。第一線を離れたとはいえ、やはり佐伯氏の存在感は大きい。

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