旧ユーゴスラビアのクロアチアやボスニアで、セルビア人私兵集団を率い、「民族浄化」のため虐殺を繰り広げてきた暴力組織「トラ」のボス、「アルカン」ことジェリコ・ラズニャトビッチが、一月中旬、ベオグラードのホテルで暗殺された。

 この男の殺害を巡っては、セルビアの悪行を知り抜いた男を消すためにミロシェビッチ・ユーゴ大統領が直接指令したとの政府陰謀説から、マフィアの内部抗争説まで幅広い憶測が流れた。元警察官数人が逮捕されたが彼らを真犯人と信じる者はおらず「真相は永遠に出てこないだろう」との見方が有力だった。しかし、最近になって米CIAとコソボ解放軍(KLA=昨年解散)の“共同作戦”説が急浮上している。

 外交筋によると、犯人に関して事件後、沈黙を貫いてきたアルカンの側近幹部が、CIAが計画を練って資金を提供し、KLA内の過激派が実行に及んだことを独自調査で突き止めたと近親者に伝えたという。

 アルカン暗殺の三週間後には現職のブラトビッチ国防相がレストランで暗殺されており、ミロシェビッチ大統領暗殺を巡ってフランス情報機関とCIAの“先陣争い”さえ起こりうる状況だという。

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