リビアの最高指導者カダフィ大佐が、息子への将来の権力委譲に向けて布石を打ち始めた。

 リビア全人民会議は三月一日、大佐の意向を受け、国防、外交、治安関係を除く中央省庁の多くを廃止、地方機関に機能を移すことを決めたが、大佐は、この国家機構の大改編の翌日、「国家元首の必要性」に初めて言及して関係者を驚かせた。

 リビアには国家元首に関する明確な規定はない。大佐も一九六九年の革命以来、元首ではなく「革命指導者」として独裁権力を行使してきた。「国家元首」発言は、後継者と目される長男のアル・イスラム氏の権威強化を図る意図と関係があるとみられている。

 大佐の二人の息子のうち、次男のアル・サッド氏は、サッカーのリビア代表で、選手としても評価は今ひとつだが、アル・イスラム氏は最近、公の場への登場が増えて注目されている。

 リビアは現在、国際社会への復帰に懸命だが、経済不振は深刻で大佐の権力基盤は動揺している。省庁廃止は、後継体制への道筋をつけるためにも、失政の責任を役人に転嫁して自らの権威を回復する措置とみられている。

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