中国の「台湾白書」がもたらした衝撃

執筆者:田中明彦2000年3月号

 今年は、世界的に選挙の年だ。アメリカの大統領選挙はいうまでもなく、日本でも総選挙がある。三月下旬にはロシアで大統領選挙が行なわれ、四月には韓国の総選挙もある。それらの選挙の中で、今後の東アジア情勢に大きな影響を与えるとみられるのは、三月十八日の台湾総統選挙である。いよいよ台湾の総統選挙が近づくにつれ、台湾を挟んで中国とアメリカの論戦も緊張感を増している。

 きっかけは、二月二十一日に中国政府が発表した「一つの中国の原則と台湾問題」と題する白書だった。昨年七月に台湾の李登輝総統が、台湾と中国の関係は「特殊な国と国の関係」だと指摘して以来、中国は一貫して台湾を厳しく批判してきたが、それでも、言動面ではかなり自制的であった、と評価することもできた。しかし、総統選挙を目前にして、強硬姿勢を強めたとみられるのである。特に注目を集めたのは、この台湾白書の以下の部分だ。

「台湾海峡情勢は重大な危機をはらんでいるが、中国政府は依然あらゆる可能性を尽くして、平和統一を目指している。しかし、台湾がいかなる名目にせよ中国から切り離されるような重大な事件が起きた場合、外国が台湾を侵略、占領した場合、台湾当局が交渉による両岸の統一問題の平和的解決を無期限に拒否した場合、中国政府としては武力行使を含むあらゆる可能な断固たる措置をとって、中国の主権と領土保全を守り、中国統一の大業を達成するほかない」(『日刊中国通信』、二月二十三日)

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。