中国の江沢民国家主席の「側近中の側近」である曾慶紅共産党組織部長(政治局員候補)が三月下旬から四月初めにかけて豪州、ニュージーランド、日本、韓国を訪問する。昨年三月の組織部長就任以来、初の外遊だ。次世代リーダーの一人と目される曾氏の外交デビューともなりそうだ。

 組織部長就任までは江主席の外国訪問に必ず同行し、政局や政策運営でも「参謀」としての役割を果たしてきた。江氏の権威強化につながった陳希同・北京市書記の汚職摘発は曾氏のシナリオとささやかれた。また、台湾問題の最高決定機関である党の「台湾問題指導小組」のメンバーでもある。

 これまでは「黒子」役に徹し、表舞台で力を見せることは少なかった。日本でも個別に会談した政治家はあまりいない。「老朋友」といえるのは、訪日時に官房長官として意見を戦わせ合った野中広務氏や、以前から曾氏に注目していた中国通の加藤紘一自民党前幹事長ぐらいだろう。

 曾氏と江氏の出会いは十五年前に遡る。曾氏は八四年、石油工業部副局長から上海市党委組織部の副部長に就任、翌八五年に江氏が電子工業部長(閣僚)から上海市長(市党委副書記)に起用された時に出会っている。

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