サウジアラビアでの石油採掘権を失ったアラビア石油の小長啓一社長(元通産事務次官。二十八年入省)が窮地に陥っている。日本人社員をほぼ半減させるリストラ策を発表したものの、自らの進退は明らかにせず、社内では「まず自分が責任をとれ」という声が出る始末。権益の半分はクウェートに二〇〇三年一月まで残っているが、更新はサウジ以上に厳しいとの見方が一般的だ。

 小長社長は二月二十八日、権益失効の記者会見では、「生き残りのため合併も視野に入れる」と強調、石油業界では「通産省による救済説」が駆けめぐった。相手としては、アラ石系列精製会社富士石油の大株主であるジャパンエナジーや、国策的色合いの濃い帝国石油、棚橋祐治元通産次官(三十三年入省)が取締役相談役に就いたばかりの太陽石油などの名前が取りざたされた。ところが頼みの通産省が「今のアラ石に手を差し伸べるところがあるとは思えない」と傍観姿勢で、一週間後のリストラ策の発表会見では、「合併については言葉が走りすぎた。具体的な計画はない」と大幅にトーンダウンする始末。

 小長社長への辞任コールは高まる一方だが、次期社長と目されていた岡松壯三郎副社長も通産OB(三十五年入省)で「後を継ぐ資格はない」という声が強い。後任人事もままならず、小長社長は睡眠薬を手放せない日々が続いているという。

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