小渕恵三首相が唇を震わせ、親子ほど歳の離れた首相番記者に怒鳴り声を上げたのは三月九日夜。一連の警察不祥事への対応のまずさを野党三党首から追及され、保利耕輔国家公安委員長(兼自治相)の罷免を要求された党首討論(クエスチョンタイム)の翌日だった。

 午後七時、千鶴子夫人が待つ棟続きの公邸に戻ろうとした首相は、記者団の質問にきっとなった。「総理は昼間の懇談で『国家公安委員長は自治大臣と分離し専任職にする』と発言されたが、官房長官は会見で否定的なことを言われたが……」。

「昼間の懇談」とは、首相サイドがこの日、「歩きながらの短時間のやり取りだけでは真意が伝わらないから」とソファーのある喫煙室に番記者を招き、午前十一時半から三十分近く首相と話す時間を特別に設けたもの。記者団が指摘した首相発言は、その席で出た「自治相との兼任はオーバーデューティーではないか」との質問に対し、首相が「(警察法六条で)閣僚が国家公安委員長を兼任することになっている。そこで半分足かけをしているが、責任をどう考えるか、内閣として考えていかねばならない」と答えたことを指していた。

「分離するなんて言った覚えはないよ。真意を取れないのなら、今回やったことはもうしないから」

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