来年一月に退任するクリントン米大統領の周辺から、世界の紛争を仲介する「和平の使者」を大統領の次の目標に掲げる声が漏れ始めた。

 大統領は退任時の年齢がまだ五十四歳で、その若さを持ち味に世界の紛争地を駆けめぐる腹づもりを固めているという。お手本は在任中の失点を引退後の民間外交で取り返したカータ元大統領で、クリントン氏もモニカ・スキャンダルという人生最悪の汚点を今後の活動で何とか清算したい考えといわれる。

 世界の紛争地の中でも大統領の思い入れが最も深いのが、英国の北アイルランドだ。側近のミッチェル元上院議員を和平交渉の議長に送り込んで、当事者間の合意達成に貢献したものの、アイルランド共和軍(IRA)の武装解除問題で、和平の進展は行き詰まったまま。現地にしばらく滞在してでも、恒久和平の立て役者として歴史に名を残したい意気込みと伝えられる。

 大統領には、モニカ問題の法廷闘争で背負い込んだ巨額の借金の返済という現実的な動機もあり、故郷のアーカンソー州に設立するクリントン・センターを拠点に、自伝執筆や講演など多彩な事業も展開する見通しだ。

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