陳水扁を支える人脈と金脈

執筆者:早田健文2000年4月号

台湾新時代の担い手は誰か[台北発]三月十八日、台湾の総統選挙で民進党の陳水扁氏が当選した。国民党の連戦氏、無所属の宋楚瑜氏との三人による激戦を制しての当選だった。戦後五十年以上続いた国民党支配の終焉という大事件にもかかわらず、台湾の人々は意外に冷静だ。しかし、五月二十日に迫った総統就任式に向け、大幅な人事刷新が行なわれる。 五十年以上の統治で、国民党は官僚体制、軍、財界といったあらゆる分野に党組織を浸透させ、堅固な「国家マシン」となった。国民党は国家そのものであり、台湾を支える人材もすべて党員として国民党に集まった。したがって日本の政権交代のような、政務官交代だけの話ではすまない。政権交代による人事刷新が、台湾社会にこれまでにない衝撃を与えるのは間違いない。その中で、これから陳水扁政権を支えていく人脈、金脈を探った。 与党となった民進党はそもそも反国民党勢力の集合体であり、いわば派閥の寄り合い所帯である。しかし今回の選挙で、民進党は派閥を超えてかつてない結束力を示したといわれる。 民進党には、新潮流派、正義連線、福利国連線、美麗島派の四大派閥があるとされる。派閥間の理念的な差はそれほど大きくはなく、人的関係が派閥形成の主因だ。そのうち最も注目されるのは党内主流派の新潮流派、そのリーダーは陳水扁陣営総幹事として選挙を指揮した邱義仁氏だ。正義連線は陳水扁氏の出身派閥。福利国連線の張俊雄氏は陳水扁選挙本部主任を務め、最も近い側近とされる。党創設の中心だった美麗島派は、許信良前主席が離党して総統選挙に出馬したことから微妙な立場にあるが、張俊宏氏を中心に影響力を行使している。

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