4%

執筆者:伊藤洋一2000年4月号

 この数字で、アメリカ経済の成功の秘密が明らかになったと言って良い。「成功」とは、「インフレなき景気の力強い拡大」である。 その秘密は、市場の予想さえ大幅に上回る「潜在成長力の上昇」にあった。七〇、八〇年代にはアメリカの潜在成長力は「二・五%」と言われてきた。労働力の伸び一%に、生産性の伸び一・五%を加えたものだ。IT革命の進行で九〇年代は徐々に上昇しているというのが定説だったが、具体的な数字は民間機関からも提示されることは少なかった。 しかし、予期せぬ所から具体的な数字が示された。米金融当局ではグリーンスパンFRB議長に次ぐ地位にあるマクドナーNY連銀総裁が三月末に来日して「アメリカの労働力は年一%で増えており、労働生産性は年三%の上昇が可能だ。財やサービスを供給する能力の伸びは合計四%程度になる」と述べた。これはFRBが考える「米国の潜在成長力」の数字そのものだと言える。 九九年第三・四半期は五・七%、次の期は七・三%と米成長率はこの「四%」をさらに上回っている。だからこそFRBは利上げをしているわけだが、「潜在成長力四%」というのは掛け値なしに輝かしい数字である。 潜在成長力は富と成長の源泉だ。現在の日本のそれは、「一%前後」だと言われる。彼我の差は大きい。労働人口の伸びがゼロの近い日本は、生産性を伸ばす以外に「インフレなき高い成長」を実現する道はないが、財政支出の規模ばかりに目が向いている日本の経済政策は、根本的な欠陥を抱えていると言える。

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