二月二十二日、政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大学教授)に、ある試案が提出された。タイトルは「弁護士制度改革の論点」。提出者が、元日本弁護士連合会会長で、審議会委員でもある中坊公平氏であることから、「中坊試案」とも呼ばれている。 中坊試案は、現在全国で一万七千人しかいない弁護士の数を、五、六万人に増やすという「大胆な提言」(日弁連幹部)が一般の注目を集めているが、専門家の間で関心を集めているのはこれとは別の点である。硬い表現は毎度のことで恐縮だが、原文のまま引用させて頂くと以下のくだりになる。「日本弁護士連合会は、裁判所法に定める下級裁判所裁判官の推薦にかかる委員会(以下、推薦委員会という)が推薦を求める数の裁判官候補者を推薦する義務を負う」「推薦を受けた弁護士は、正当な理由なく裁判官に任命されることを拒むことができない」「正当な理由の有無は、当該弁護士の所属する弁護士会がこれを審査する。日本弁護士連合会は、この審査結果を推薦委員会に報告しなければならない」 平たく言えば、下級裁判官の事実上の任命権を弁護士会に握らせろ、ということだ。この提案に対しては、日弁連と「コップの中の争い」を続けてきた最高裁や法務省からだけでなく、司法改革を長年見守ってきた政府関係者からも驚きの声が上がっている。

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