「スペインは好調」

執筆者:黒田健哉2000年5月号

中道右派の改革路線が生んだ欧州の新たな成功モデル

[マドリッド発]一九七〇年代まで、欧州の人々にとってスペインは「ピレネーの向こう側」だった。実際、スペイン国民自身が、国境を越えてフランスに出かける時、「ヨーロッパに出かける」と言ったものである。歴史に輝かしい大航海時代を持ち、広大な国土と温暖な気候に恵まれながらも、長い経済停滞と外交的孤立が続いたこの国は、欧州の人々にとってすら「闘牛とフラメンコの国」に他ならなかった。しかしそのスペインが、欧州の政治・経済・社会をかき回し始めている。

企業のめざましい国際展開

「私がイメージしていた新内閣が出来て満足。新しいスペインの始まりだ」――四月二十七日、ホセ・マリア・アスナール首相は、組閣後、満面に笑みをたたえながらこう語った。

 三月十二日の総選挙では、直前まで与野党の拮抗が予想されていたが、フタをあけてみればアスナール首相率いる与党・国民党(中道右派)が地滑り的大勝をおさめ、結党以来の単独過半数を獲得した。今回発足した内閣は、副首相、蔵相、内相など主要ポストに前内閣の閣僚を登用し、その他ほとんどの閣僚も国民党で占めた正真正銘の「国民党内閣」だ。

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