民放が外資に買われる日

執筆者:藤田純一2000年5月号

 放送デジタル化を目前に触手をのばす家電、通信、そして外資――

「ソニーがフジテレビに出資しますか。やっぱりこうなると思いましたよ」――。ある民放キー局幹部はそう打ち明ける。ソニーは民放最大手のフジテレビに資本参加する方向で現在、最終調整中という。フジの大株主である文化放送から株を買い取る模様で、出資比率は一〇%前後と伝えられる。ソニーはニッポン放送に次ぐ第二位株主となる見通しだ。

 フジテレビとソニーはもともと親密な関係にある。CSデジタル放送では両社がソフトバンク、豪ニューズ・コーポレーションなどと共同でJスカイBを立ち上げた。その後パーフェクTVとの合併でスカイパーフェクTVになった今も、両社ともに筆頭株主グループを形成している。ソニーの出井伸之社長とフジテレビの日枝久社長はともに早大出身で、同じ六十二歳。業界の改革派で知られる二人は、意気投合する間柄だ。今回の提携も日枝氏が出井氏に持ちかけた案件のようだが、その背景には民放の株を狙うさまざまな勢力の動きが感じられる。

テレビが電子商取引の端末に

 フジテレビを頂点としたフジサンケイグループは鹿内家が支配力を保持し、グループを私有化しているとの批判を受けてきた。それを九二年の“クーデター”で覆したのが日枝氏らだ。だが鹿内家はニッポン放送の筆頭株主なだけに、「資本の論理で巻き返しを図らないか」がグループ最大の懸念であり続けた。

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