現代財閥「民間外交」の功績と限界

執筆者:草壁五郎2000年6月号

対北朝鮮事業に執着する韓国現代グループ経営危機の真相

[ソウル発]韓国最大の財閥、現代グループが揺れている。

 資金ショートを起こして経営危機が叫ばれていた現代グループの鄭周永名誉会長(八四)は五月三十一日、「今日からすべての経営の第一線から退き、さらに鄭夢九現代自動車会長(六二)、鄭夢憲会長(五一)もいっしょにすべての経営の一線から退く」と発表した。現代グループ支援の条件として、韓国政府や金融機関は鄭周永名誉会長の退陣を要求していたが、それを上回る「トップ三人同時退陣」の発表は内外に大きな衝撃を与えた。

 裸一貫から韓国のトップ財閥を育て上げ、「ワン(王様)会長」といわれるほどワンマン企業経営をしてきた鄭周永名誉会長が「世界的な流れ」に従って、企業の「所有」と「経営」の分離を宣言した瞬間だった。

 しかし、鄭周永名誉会長は「現在推進中の南北経済事業の特殊性を考慮し、鄭夢憲会長はこれに関連した事業にのみ専念する」と付け加え、対北朝鮮事業のみは五男の鄭夢憲会長に任せると宣言。対北朝鮮事業への執着を見せた。

 今年四月、独シュピーゲル誌とのインタビューで「百二十歳まで働ける」と気炎を吐いていた鄭周永名誉会長だが、最近は側近に「立派な事業家としてよりも、南北統一に寄与した人間として名を残したい」と語っている。鄭周永名誉会長にとって対北朝鮮事業は最後まで手放せない事業なのだ。

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