昨年、マンデラ前大統領を継いだ南アフリカのムベキ大統領夫妻が五月二十二日、国賓として米国を初訪問し、同夜、クリントン大統領夫妻が主催する歓迎晩餐会がホワイトハウスでもたれた。

 この訪問で米大統領がどのようにムベキ大統領をもてなすかは、エイズ撲滅運動を推進する米国のNGO(非政府組織)や医療関係者にとって大きな関心の的だった。というのは今年になって両国間でエイズ治療をめぐり論争が展開されてきたからだ。

 南アは、エイズを発症させるといわれるHIVウィルス保持者が国民の約一〇%を占め、特に妊婦は二〇%を超える。HIVウィルスに有効な治療薬AZTは高価なためほとんど使われず、米、南アの医療関係者は「AZTを無料配布すべきだ」と主張してきた。

 しかし一部の米人研究者は、ウィルス保持者の発症が比較的低いことから「HIVとエイズに関連性はなく、貧困や栄養不良がエイズの原因」と主流学説に異を唱え、ムベキ大統領もこれに同調し、「エイズに対するAZTの効能は確認されていない」と、今年になって妊婦への使用を禁じた。エイズ対策のために設立した南ア政府の聴聞機関にも、非主流学説の米人研究者をメンバーとして入れた。

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