公明党への次のアメは「年金」

執筆者:2000年6月号

総選挙を前にまたしてもバラマキ

 小渕恵三前首相が息を引き取った五月十四日、小渕内閣で社会保障問題を取り仕切ってきた丹羽雄哉厚相は、三重県四日市市のホテルで記者会見に臨んだ。その日は、同市内の高齢者福祉施設を視察、同行した記者団も介護保険など高齢者問題に関わる発言があるもの、と決めてかかっていた。ところが丹羽厚相は突如、「基礎年金の国庫負担を来年四月から二分の一に引き上げる」方針を表明、記者団を驚かせた。

 現在、基礎年金の財源は三分の一を国庫負担、残りを保険料で賄っている。国庫負担を二分の一にすれば、国民年金の保険料は月額三千円(現行一万三千三百円)、厚生年金の保険料率は一%(労使折半で月収の一七・三五%)下げることができる。丹羽厚相は「制度への未加入者、保険料の未納者が全体の一三%にも達するなど、公的年金への不信感が高まっている。国庫負担の引き上げで制度を安定化させなければならない」との危機感を強調。年間二兆四千億円の必要財源は百四十兆円ある年金積立金を取り崩して調達し、消費税率アップや赤字国債増発はしないと説明した。

 国庫負担の引き上げである以上、当座の財源を年金積立金から借り入れても、いつかは国が別の財源を調達して返さなければならない。自民党内でも社会保障政策のエキスパートとして一目置かれる丹羽厚相がこうした点に気づかないはずがない。にもかかわらず、あえてこの時期に国庫負担引き上げを打ち出したのは、そうしなければならない政治的事情があったからだ。

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