「もうこれ以上、長銀発の破綻はやめてもらいたい」

「そごうについては検討中だが、ご趣旨に添えるかはお答えできない」

 日本長期信用銀行の新生銀行としての再スタートを目前に控えた五月下旬、こんなやり取りが都内のある場所で交わされたという。先の言葉は経団連会長で、新生銀の社外役員も兼ねている今井敬氏のもの。答えているのは、新生銀の八城政基会長兼社長である。

 昨年九月、米リップルウッド・ホールディングスを中心とした投資組合に長銀の譲渡が決まって以来、“金融村の論理”が通じぬ外資ゆえ、融資先が苦境に陥るのではないかとの懸念が取り沙汰されてきた。案の定と言うべきか、ここのところ立て続けに関連信販会社のライフと第一ホテルの支援要請を拒否した同行に、関係者から怨嗟めいた声が漏れてくる。

「ライフ倒産で長銀(新生銀)には相当の公的資金が入るらしい。譲渡契約は、融資先が潰れるほど長銀の懐に税金が入る仕組みだ」――。ある大手銀行の融資担当幹部は、苦々しげに訴える。

 新生銀は譲渡契約により「譲渡後三年以内に、引き継いだ資産に瑕疵があり、債権が二割以上減価した場合には、国に簿価で買い戻しを請求できる」という特権を持つ。一方で債権放棄に応じれば、この権利は消滅する。「瑕疵」とは、粉飾決算の露呈などで資産価値が著しく下落した場合や融資先の倒産など、譲渡時に説明のなかった事象を指している。

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