「独裁」に布石が打たれたプーチン人事

執筆者:桜井薫2000年6月号

要所要所に「サンクトペテルブルク人脈」を配して……

[モスクワ発]ロシアのプーチン大統領が新政権の陣容を固めた。エリツィン前政権時代の主要閣僚や幹部がほぼ留任。一見、何ら変哲のない人事政策のように映るが、要所には自らの側近を配置し、将来の「独裁」体制確立に向けた布石を打っている。

次期首相候補のクドリン氏

 まずは新内閣の陣容をみてみよう。前内閣の第一副首相から順当に昇格したミハイル・カシヤノフ首相は、エリツィン前政権の「ファミリー」だった政商ベレゾフスキー氏や石油王のアブラモビッチ氏(いずれも現下院議員)との親密な関係がとりざたされている。カシヤノフ氏の首相登用の背景に、両氏の政治的圧力があったとの説もある。

 もっともカシヤノフ氏は対外債務問題の専門家。出身の大蔵省内でも「国内の金融・財政政策は全くの素人」と評される。組閣段階で“首相の威厳”を求めた同氏の要望に添い、プーチン大統領は新内閣に第一副首相ポストを置かないことに同意したが、その見返りとして、合計五人の副首相の中核に自らの側近を送り込んだ。アレクセイ・クドリン前大蔵第一次官である。

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