カスピ海周辺は「第二OPEC化」も

執筆者:小島鴻太2000年6月号

新たな大規模油田の確認で資源外交はさらに活発に

[アルマトイ発]十九世紀、欧米列強が世界を舞台に繰り広げた資源争奪戦を、人は「グレート・ゲーム」と呼んだ。二十一世紀を目前にした今、欧州、中東、ロシア、アジアが交差するカスピ海周辺で、新たなグレート・ゲームが展開されている。カスピ海周辺に眠る膨大な石油と天然ガスを誰が所有し、どこへ運ぶのか。ゲームの行方は国際政治を揺るがしかねない。日本は日増しにエネルギー問題への危機感を失いつつあるが、ユーラシア大陸の真中では、各国が国益をかけて激突している。

「カスピ海沖で大規模油田の存在を確認した」。五月中旬、カザフスタンのトカエフ首相の声明にオイル・メジャー(国際石油資本)が色めきたった。カシャガン油田と呼ばれるこの鉱区にかなりの埋蔵量の油田があることは早くから指摘されていたものの、推定埋蔵量で三百億バレルという規模は大方の予想を超えた。現在カザフ最大の油田、テンギス油田の三―四倍の規模である。

 九九年七月には、英メジャーのBPアモコがアゼルバイジャン領のカスピ海沖で埋蔵量四千億立方メートルの大規模ガス田を発見している。続いて英蘭メジャーのロイヤル・ダッチ・シェルも、この三月にアゼルバイジャンのイナム鉱区の利権を三千六百万ドルで取得した。シェルがアゼルバイジャンで石油開発にかかわるのは、実に九十年ぶりのことである。

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