金大中大統領北朝鮮コネクションの謎

執筆者:春名幹男2000年7月号

 韓国大統領、金大中氏が二十七年前の一九七三年八月八日、東京のホテル・グランドパレスから拉致された事件は今では、夢のかなたの出来事のようだ。あの金大中氏が長年の念願だった大統領に就任し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記と、初めて南北首脳会談を行うとは……。

「今でも、ひとつどうしても理解できないことがあるんですよ」と言って、在京情報筋が教えてくれたのが、拉致事件の六日前の同月二日に、東京のある新聞記者が都内のホテルで金大中氏に会見した時の経緯だ。

「実はこの記者は金大中氏と会うために在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)に電話してアポイントメントを取ったというんです」と同情報筋はそう話してくれた。実は、銀座第一ホテルで行われたこの会見で、金大中氏は韓国中央情報部(KCIA)の金東雲一等書記官に所在を確認され、その結果、拉致されてしまったのである。

「理解できない」というのは、「反共」のはずの金大中氏が、なぜ朝鮮総連をパイプにして日本の記者と会ったのか、だ。

 可能性としては、(1)当時“浪人中”で反朴正熙大統領だった金大中氏に、朝鮮総連の方から接近して、この記者との会見をセットした、(2)金大中氏と朝鮮総連の間にすでに何らかの秘密の関係があった――などが考えられる。

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