アチェ分離独立の動きやまず

執筆者:大塚智彦2000年7月号

和平合意は発効したものの、今なおインドネシア最大の“火種”「多様性の中の統一」というインドネシアの国是が崩壊の危機に瀕している。昨年八月の住民投票で独立を勝ち取った東ティモールに続けとばかりに、アチェ特別州、イリアンジャヤ州で独立への動きが急加速しており、マルク諸島でも宗教抗争が激化。六月二十六日にはワヒド大統領がマルク諸島に非常事態を宣言した。 同国初の民主的選挙で選ばれたワヒド大統領は、対話重視の和平路線を主唱している。しかし、イリアンジャヤ州の住民会議は六月四日に「独立」を宣言。アチェ独立運動も戦闘停止の和平合意には漕ぎつけたものの、依然、衝突は続く。八月に予定される国権の最高機関、国民協議会でも大統領の責任追及の声が高まるのは必至だ。国軍守旧派の陽動作戦 六月二日、インドネシアからの独立を求める「自由アチェ運動(GAM)」と、インドネシア政府との間の停戦合意が発効した。GAMは一九七六年に「独立宣言」をして以来、インドネシア国軍に対して武力闘争を続けてきたが、五月にスイスのジュネーブで和平交渉のテーブルに初めてつき、暴力行為の停止など実質的な停戦を盛り込んだ和平文書に調印した。

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