日米サイバー同盟の構築を

執筆者:山田英幾2000年7月号

サイバー軍事力の登場により、日米同盟は変貌を強いられている。この分野の整備で、日米はより対等な同盟に近づくのでは。「国益にもとづいた長期安全保障戦略を持たない経済大国」という言葉が、これまで幾度繰り返されただろうか。 ソ連が消滅して冷戦が終わったときも、誕生したばかりのクリントン政権が強い姿勢で、結果重視の経済政策をぶつけてきたときも、自衛隊がPKO(国連平和維持活動)として初めて海外に出たときも、米兵の少女暴行事件に端を発した沖縄の基地問題が、大きな政治課題になったときもそうだった。そして先月、朝鮮半島で初の南北首脳会談が実現し、大方の予想を大きく超える進展を見せたときも、「長期安保戦略の不在と必要性」が様々な言葉で主張された。 だが「戦略」は、それを具体化させるための周到な準備と、政治の意思と、コンセンサスを得る努力が伴わなければ、策定したところで何の役にも立ちはしない。更に、対象に優先順位をつけることも必要だ。朝鮮半島や中国、台湾海峡といった東アジアの周辺地域を対象にすることは勿論重要だが、今、日本にとって最も求められているのは、アメリカに対する長期戦略ではないのか。 日米は、アングロサクソンの血で結ばれた米英同盟とは、質も違えば深さも異なる。だとすれば、常にある種の緊張関係を保つことが、日米同盟を崩してはならないという自律的な力を生むことになる。互いに「あなたの喉元に突き付ける刃は持っているが、決してあなたには向けない」という関係を作ることこそ、信頼感を高める力になり得るのだろう。そのうえで長期戦略を策定し、互いにカードを切りあいながら、相手が納得できるかたちで、自国の国益を実現するのが健全な日米同盟のあり方だろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。