自民、公明、保守の連立与党三党に引き続き日本の舵取りを任せるか、それとも野党第一党、民主党を軸にした新政権を誕生させるか、「政権選択」が最大の争点になった六月二十五日の第四十二回衆院選挙で、辛うじて勝ちを拾った森喜朗首相は七月四日午後、衆参両院本会議で第八十六代首相に再選され、第二次森内閣を同夜発足させた。

「結果として『日本新生内閣』という形ができあがったと思っているし、適材適所の人事配置をすることによって改革実行型の内閣ができたと自負している。IT戦略をさらに加速させなきゃならんと考え、新たにIC担当大臣を置き、官房長官にお願いすることになった」

 午後十一時前に官邸で行われた首相のぶら下がりインタビュー。メモを取り終え、別棟の記者クラブへ足早に戻る報道各社の首相番記者からは押し殺したような笑い声が漏れた。直接的には、これまで何度も「IT(情報技術)」と「IC(集積回路)」を言い間違えてきた首相がこの日も「またやった」という冷笑だったが、それにも増して前段の「適材適所」「改革実行型」発言が、組閣取材を続けてきた記者団にはブラックユーモアにしか聞こえなかったからだ。

 首相インタビューに先立って行われた新閣僚の記者会見が、そのことを雄弁に物語っていた。中尾栄一元建設相(今回選挙で落選)が六月三十日、大臣在任中の受託収賄容疑で逮捕され、最も人選が注目された建設相に就任した扇千景保守党党首は「何もなければ回ってこなかったポスト。なぜ私なのかと思うところがあり、納得するまで時間がかかりました」と、専門外の分野に回されたことに不満を隠さず、この日明け方まで首相と電話でやり合ったことを紹介。「貧乏くじを引いた気持ちか」との質問に、平然と「その部分もあります」と答えた。建設相と並ぶ渦中のポスト、金融再生委員長(金融担当相)を任された久世公堯参院議員が、焦点の大手百貨店「そごう」再建のための債権放棄問題について「各方面の意見を聞いて広く考えていきたい」としか答えられず、吉川芳男労相に至っては、「失業率低下に向けどんな対策を考えているか」との「イロハのイ」と言うべき質問にも、「何をなすべきか、詳しく答弁できないのが残念だ」と苦悶の表情を浮かべたのである。

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