3022万人

執筆者:伊藤洋一2000年7月号

 低金利環境の持続やオンライン取引の増加を背景に、日本も「株式の時代」に突入した。東証発表の九九年度株式分布状況によると、日本の個人株主数は三〇二二万人。子供も含めた日本人の四人に一人の割合である。同年度に日本の個人株主数は前年度比一九二万人、六・八%も増加した。個人株主の増加はこれで四年連続である。 株式投資への関心の高まりは、投信統計にも見ることができる。二〇〇〇年五月末の投資信託の純資産残高は約五八兆六二〇〇億円と、八九年末の過去最高水準五八兆六四九二億円に肉薄した。八九年末と言えば、日経平均株価が四万円に接近し史上最高水準だった時である。十年の空白の時間をおいて、日本も株ブームになりつつあるのだ。 株をインターネット取引で行う人の数も急速に増加している。五月末時点のオンライン証券取引口座数は九九万五〇〇〇で、六月に入っても上位の証券会社を中心に新規の開設が順調に増加している。一年間で十五倍になったことになる。本屋には株の本が並び、ネットには株関連サイトが急増。 背景にあるのは、「株式市場の劇場化」である。数多くの銘柄の動きを逐一知らせてくれる機器は既に揃っている。携帯電話からパソコン、経済専門のテレビ番組まで。人間は常に動くものに興味を持つ。産業の盛衰も激しくなって、銘柄の上げ下げも激しい。「劇場」となった市場は、お馴染みさん、新顔さんのお金を引き寄せる。そこには悲劇も喜劇もある筈だが、代替投資手段の少ない日本では株式市場への関心は高まらざるを得ない。

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