「世紀の独占裁判」の第一幕が終わった。六月七日、米ワシントン連邦地裁はマイクロソフト社に対して二分割を命じる判決を下した。同社が控訴したため法廷闘争はこれからも続くが、第一幕を通じて浮かび上がったのは、米司法の「現実対応力の高さ」だ。 判決言い渡しの二週間前にあたる五月二十四日午前、連邦地裁で行われた最終弁論の法廷に立ち会った人々は、裁き手のジャクソン判事の「剛腕」ぶりに二度にわたって驚かされることになった。 最初は、司法省がこの裁判のために起用した「お雇い検事」であるデビッド・ボイース氏が熱弁を振るっている時のこと。ボイース主任検事は、八〇年代初めまで、司法省が米IBMを相手に続けた独占禁止法裁判でIBM側についた弁護士。「大企業が独禁訴訟にどう対応するのか知り尽くした人物」(米法曹関係者)で、司法省側の強力な助っ人だった。 そのボイース氏が「マイクロソフトをOS(基本ソフト)事業部門と、インターネットの閲覧ソフト(ブラウザー)など応用ソフト事業部門に二分割すべきだ」と主張しているさなか、ジャクソン判事はなんと「三分割ではいけないのか」と口をはさんだのだ。二分割さえ認めてくれれば、との思いで必死の弁論をしている最中に、中立であるはずの判事の口からいきなりもっと過激な「三分割案」が飛び出したのだから、面食らうのも無理はない。思ってもみない「援護射撃」に、ボイース検事はしばし言葉を詰まらせた。

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