WTO加盟で揺らぐ中国共産党支配

執筆者:金子秀敏2000年8月号

江沢民は思想締め付けを図るが、「自由化」はくい止められない 二十一世紀の歴史は、東西冷戦の終結を告げる一九八九年のベルリンの壁崩壊から始まったといわれる。この筆法を借りれば、朝鮮半島の南北首脳対話から、「アジアの二十一世紀」が始まった。だが朝鮮半島はあくまで舞台の袖にすぎない。二十一世紀に起きるアジアの地殻変動のメインステージは、中国大陸だ。 ベルリンの壁が崩れたのと同じ年、中国では天安門事件が起きて民主化が挫折し、アジアには冷戦構造が温存された。その冷戦構造が、十一年のタイムラグを置いて、変動しようとしているのだ。二十一世紀にアジアでも冷戦構造が崩れるかどうか、そのカギは中国共産党がいつまで今のまま統治能力を維持できるかにかかっている。 中国は早ければ年内にも世界貿易機関(WTO)に加盟する。世界に市場を開放すれば、トウ小平の「社会主義市場経済」という手品はもう通用しない。国際標準という超大型戦車が中国大陸に上陸し、社会主義市場経済を普通の市場経済にならしていく。 その結果、中国大陸の巨大市場を制するのは、中国の国有企業か、外国資本か。もし中国が敗れたら、国有企業の頂点に立つ共産党の支配は内部から動揺する危険を秘めている。ここが崩れたら、アジア全体が大変動を起こすだろう。半世紀前、日米の太平洋における覇権争いは、広島、長崎への原爆で終わり、本土決戦にはならなかった。しかし二十一世紀冒頭の中国と米国の中国市場をめぐる覇権争奪は、中国にとっては背水の陣の本土決戦になる。

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