NTT市内回線網への接続料問題をめぐる日米協議が合意をみた七月中旬、時を同じくして次世代の通信網をめぐる重要なプロジェクトが終了した。来年五月からサービス開始が予定されている次世代型携帯電話「IMT-2000」。その通信網に流れるデータ量を予測したり、利用状況に応じて伝送路網を選択するための手法を探る、IMT-2000の生命線ともいえる部分を構築するプロジェクトだった。 このプロジェクトを率いたのが、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)・トラヒックリサーチセンタ所長の川島幸之助である。 川島のことを同僚は、「私たちと違って王立科学アカデミークラスの研究者。畏れ多い存在だ」と冷やかすが、確かに川島の通信トラヒック理論には国際的な評価が与えられている。しかも川島は単に研究者ではなく、実務家として理論の実現に取り組んできた。 通信トラヒック理論とは、通信網とそこを売れる音声やデータの関係を探るものだ。道路と自動車の流れをイメージするとわかりやすい。道路の設計では、自動車の増加数や目的地などを予測して道路幅を決めたり、渋滞が起きないような工夫を施す。同じように、通信網の設計や管理でも、将来の利用予測を立てて通信網の規模を算出したり、道路でいえば渋滞にあたる輻輳(電話がつながらない状態)を防ぐ方法を探るのが通信トラヒック理論だ。

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