創業者チームとの投資交渉のポイント

執筆者:梅田望夫2000年8月号

 昨年九月十一日、岡本行夫さんと私がエンジェルとして創業者たちと投資交渉に当たる日がやってきた(前号参照)。場所はサンフランシスコ・エアポート・マリオット・ホテル。スイートルームといっても名ばかりの殺風景な一室に、創業者チーム三人、岡本さんと私、臨時に構成した投資専門家チームから二人が集まった。四角いコーヒーテーブルのまわりのくたびれたソファに、七人がひしめくように坐って、交渉が始まった。 私たちは条件さえきちんと合意すれば、この場で投資を決定する意志を固めていた。問題は、創業者チームが私たちの検討結果を真摯に受け止め、建設的な契約条件を組み立てることができるかどうかにかかっていた。 ただ投資を受けられればいいという理由で何にでも安易に妥協するようでも駄目だが、唯我独尊で交渉に応じないというのではお話にならない。約五時間という決められた会議時間枠の中で、きちんとした大人の議論を展開してくれなければ困る。 彼らが飛び切り優秀な頭脳の持ち主であることは、これまでのやり取りを通してもう十分にわかっていた。この最後の交渉において私たちが見極めたかったのは、創業すれば毎日のように直面する「自分の思い通りにならない現実」を乗り切っていくたくましい実力を、彼らが本当に持っているのかどうかという一点に尽きた。

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