ことし二月十九日、米サウスカロライナ州で行われた共和党大統領予備選挙は緊張感に包まれていた。 ジョン・マケイン上院議員はニューハンプシャー州で圧勝し、「マケイン現象」と呼ばれるほどの快進撃を続けていた。これに対して、本命のジョージ・W・ブッシュ・テキサス州知事が反撃、事前予想では両者はデッドヒートと伝えられていた。 だが、結果は全くの予想外だった。ブッシュ候補は五三%とマケイン候補に一一ポイントもの大差をつけて逆転勝利したのである。「戦いは始まったばかり」とマケイン氏は支持者離れを防ごうと必死に訴えた。だが、サウスカロライナ州が転機になって、マケイン陣営は崩れ、ブッシュ氏は翌月のスーパーテューズデーで勝利を確実にした。 サウスカロライナ州では四年前も、ボブ・ドール候補を苦しめたパット・ブキャナン候補が、主流派の裏工作で前進を阻まれた。もし、ブッシュ氏がここでも負けていたら、米政治は全く違った構図になっていただろう。 保守的な同州には、秘密工作がやりやすい土壌でもあるのだろうか。 サウスカロライナ州予備選最終盤の二月中旬、保守派とみられる選挙民に何万通もの封書が郵送された。レターの差出人は「キープ・イット・フライング」(掲揚の継続)という奇妙な名前の政治活動委員会(PAC)。

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