シリコンバレーの「目に見えない」序列

執筆者:梅田望夫2000年9月号

 昨年の夏、創業を志す三人のインド人の若者たちの中に「才能の原石の輝き」を見て、岡本行夫さんと私はエンジェルとして自らの金を彼らに投じた。そしてその発展型として、小さいながらも「正真正銘のベンチャーキャピタル」をシリコンバレーで立ち上げようという構想が二人の間で持ち上がった。そんないきさつについて、ここ数回にわたって書き綴ってきた。 以来約一年の準備期間を経て、私たちは八月二日に総額二千五百万ドルの「パシフィカ第一号ファンド」をシリコンバレーに立ち上げることと相成った。アーリーステージ(創業間もない段階)のベンチャー二十数社に、五十万ドルから百五十万ドルを投資する計画である(www.pacificafund.com)。 準備期間中、私が肝に銘じ続けてきたのは、「自分の金を投資する」エンジェルと「人の金を預かって投資する」ベンチャーキャピタルとでは、用意すべき組織から心構えまで何から何まで違うということだった。シリコンバレーのインサイダー達を集めたチームを組成し「絶対に勝てる体制」を作ること。それができないのならば、人から預かった金を投資するベンチャーキャピタルなど始めてはならぬというのが、岡本さんと私の基本合意だった。

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