地域貿易協定へと走る世界

執筆者:2000年9月号

多国間自由貿易への熱気はさめ、今や潮流は地域・二国間協定へ急速に移ろうとしている。その底流には何があるのか。 マスコミは何ら関心を示さず、世界貿易に反対するNGOも問題視せず、十一月の米大統領選の争点にもなっていないが、多国間(multilateral)の自由貿易推進の波が急速な衰えを見せている。代わって世界各国の企業や通商担当者の関心を集めているのは、地域(regional)および二国間(bilateral)の自由貿易協定だ。 水が低きへ流れるように、市場自由化の動きは、世界的な自由貿易の構築よりも、短期間で目に見える結果を得やすい地域・二国間貿易交渉へと焦点を移していくばかりなのだ。 八月にマイアミで行なったスピーチでも、共和党の大統領候補ジョージ・W・ブッシュは、大統領に当選したら、「南米に注目することを在職中の基本的姿勢とする」と公言した。ラテンアメリカ諸国との自由貿易協定の交渉を進めることを公約したのだ。これは、北米自由貿易協定(NAFTA)を発展させて米州自由貿易地域(FTAA)を確立し、南北アメリカ大陸に自由貿易地域を創るという、共和党の政治方針に基づいた公約でもある。 同様に、民主党大統領候補のアル・ゴアも、大統領に就任すればFTAA交渉を推進するであろう。現クリントン政権が遣り残した仕事の一つだからだ。そして現政権は、年内にもヨルダンとの間で画期的な新自由貿易協定を締結すべく交渉を続けている。

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