証券大手三社三様の“苦悩”

執筆者:2000年9月号

バブル後最高益に浮かれている余裕はない 野村、大和、日興の証券大手三社がそれぞれ固有の経営課題を抱え、悩んでいる。最大手野村は氏家純一社長のもと、業績も順調にみえるが、内部ではポスト氏家をめぐって「リテール派」vs.「ホールセール派」の対立が激しさを増している。住友銀行の資本参加を仰いだ大和は、合弁で設立した投資銀行で人材の融和がしっくりいっていない。米国のシティ・グループが筆頭株主となった日興では、金子昌資社長の「米国流経営」に社内外で様々な軋轢が生じている。 以前の証券業界は野村が大蔵省と調整して道を開き、大和以下がそれに追随するというのがパターンで、経営の課題は基本的には変わらなかった。だが、九七年の山一證券破綻に代表される業界の大変革を経て、証券大手三社は独自の道を歩き始め、それぞれが異なった課題に直面することになった。日興最大の懸念材料とは 都内・兜町の日興證券本社から程近いビルの一室で、二カ月に一回、日興OBが集まる勉強会が開かれている。主催は元会長の岩崎琢弥氏で、毎回、三十人から四十人程度が集まり、外部講師の話を聞き、ビールを飲んで近況を語り合う。 ある時、その勉強会でOBたちが烈火のごとく怒ったことがあった。二〇〇〇年三月期決算の役員賞与が話題になった時だ。日興證券が発表した決算資料によると、前期の役員賞与は合計で十一億円。これを十三人の役員で分けた。一人当たり平均で八千四百万円。金子社長の賞与は一億円を軽く上回ったことは間違いない。大和証券の同時期の役員賞与の合計は九千九百万円で、日興の十分の一以下。「なんぼなんでも取りすぎじゃないのか」――。OBたちの不満が爆発した。

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