中尾栄一元建設相の受諾収賄事件、大正生命を舞台とした巨額詐欺事件、民主党・山本譲司代議士の秘書給与詐取事件……。この夏以降の東京地検特捜部の“巨悪”摘発ラッシュには目を見張るものがある。「二年目に入る笠間(治雄・特捜部長)体制もいよいよ回転してきた。それまでは東京相和銀行の後処理や整理屋グループの脱税など、いわば国税などからの“貰い”ばかりでしたからね。独自事件の立件に至るまで力がついたということでしょう」(司法関係者) しかし、検察内部は決して手放しで喜んでいるわけではない。最高検関係者が明かす。「特捜部を中心に、検察の中には苦々しい思いが残っていますよ。理由は一つ。亀井(静香)代議士です」。 少なからぬ検察筋が指摘する「亀井氏の件」とは、特捜部が三月に摘発した石橋産業手形詐欺事件までさかのぼる。 若築建設などを傘下に収める名門企業「石橋産業」の創業者一族が内紛を起こし、株が暴力団関係者に流出したことをフィクサー、許永中被告がつかみ、株の買い戻しをエサに百八十億円の手形詐欺を起こしたこの事件では、許被告の詐欺の舞台装置の一つに亀井自民党政調会長の威光があったといわれる。 石橋産業側関係者が特捜部に提出したとされる口述書によれば、許被告は石橋側を取り込む演出として、石橋産業トップらを亀井事務所で亀井氏本人に引き合わせ、後に石橋側から亀井氏に資金提供が行なわれたというのだ。ただし、亀井事務所は「当方は、云われている様な資金提供は一切受けておりません」と否定している。

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