海洋調査の背後にある中国海軍の野望

執筆者:村山義久2000年9月号

最終目的は、太平洋への制海権の拡大 南西諸島海域から津軽海峡まで、日本列島の周辺海域を動き回り、日本側をいらだたせてきた中国の海洋調査船、海軍艦艇による調査活動。河野洋平外相の八月末の訪中で、双方が調査船の活動について、相互に事前通報することなどで原則合意したが、その後の事態の展開は日本側を大いに失望させるものだった。九月五日には奄美大島に近い日本側の排他的経済水域(EEZ)で、中国の調査船が、外相訪中前と同様に活動していることが確認されたのである。 東シナ海での排他的経済水域の境界画定をめぐっては、日中の中間線を主張する日本側と、琉球諸島近くまで延びる大陸棚をベースとする中国側の見解が鋭く対立したままの状態が続いている。事前通報の有効な枠組み作りは、難航を免れないであろう。さらに海軍艦艇の活動についても「心配した事態は既に存在しない」(唐家セン外相)との言及にとどまり、今後の対応に関する明確な説明はなされていない。 なにより、日本側が問題にしたこれら艦船の活動について、中国側は「正常な行為」とする見解を変更していない。日本側への通報さえもあくまで中国側の「自主的な対応」に委ねられるというのだ。十月の朱鎔基首相訪日を目前に控え、基本的な対立点は棚上げにして、友好ムードを演出することが双方の外交当局にとって至上課題であり、中国側もこれに沿い、「原則合意」に応じてみせたに過ぎなかったのかもしれない。

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