「英語の専門家でもない私が、英語の本を書くことにしたのにはそれなりの訳があります。それは、英語を単に英語教育や英語行政の問題としてのみ捉えてはならない。それを、日本の世界との関係、少し大げさに言えば、日本の戦略の問題として考える必要がある、と思ったからです」(船橋洋一『あえて英語公用語論』文春新書 七一〇円) 今年一月、故・小渕恵三首相の諮問機関「二一世紀日本の構想」懇談会が英語の「第二公用語化」を提案した。これが反発を含め様々な議論を喚起したことは、改めて記すまでもないだろう。本書は第一線のジャーナリストであり同懇談会の委員でもあった著者が、“あえて”世に問う回答である。 反論を切り捨てる筆法ではない。力点は、あくまでもグローバリゼーションの時代の道具として、国民的な英語力を高める必要性を伝えることにある。英語学習人口が二億人以上に達した中国や、英語圏経済のバックオフィス機能を確立したインドなど、すでにアジアは世界最大の英語地域となっているという。またITの分野では、英語が「事実上(デファクト)世界標準」の地位を獲得した。英語は国家戦略の問題として考えるべきとの指摘は、強い説得力を持つ。

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