NHK(日本放送協会)

執筆者:本誌取材班2000年9月号

デジタル放送時代の到来前夜、NHKのあり方に熱い注目が集まっている。問われるのは「公共放送の使命」。新事業は不可欠なのか。あるいは単なる肥大化なのか――。 NHK(日本放送協会)が、日本の放送界を揺さぶっている。 発端はこうだ。「NHKが借りている衛星回線の余った分を、他の民間企業に貸し出したい」――。NHKが民間通信会社が手掛けている衛星回線再販事業への参入を表明したのは今年二月。その後、海老沢勝二会長をはじめNHK幹部たちは、CS(通信衛星)を使ったデジタルデータ放送への参入や、インターネットを使った新しいサービスに取り組む意向を相次いで口にしはじめた。 慌てたのはNHKを管轄する郵政省と、ライバルの民放だ。公共放送を担う特殊法人のNHKは、放送法によって細かく業務範囲が規定されている。“広くあまねく全国に”そして“国民を豊かにする”番組の提供が義務であり、放送以外の通信事業など営利目的の事業は禁じられている。周知の通り、NHKの財源は契約者から徴収された受信料だ。その財源を大切に使い、経営の健全性を損なうことがないように、との趣旨である。 そしてこの放送法には、NHKがインターネットやCSデジタルデータ放送を行なってもいいとは、どこにも明記されていない。郵政省が「今の放送法では参入は無理」(幹部)と判断したほか、民放からも「民間企業が手がける分野に受信料を使って参入されれば、公平な競争が保たれない」との反発が噴出した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。