「欧州経済の機関車」ドイツの復活

執筆者:梅本逸郎2000年10月号

大胆な構造改革で急速に解体する「ドイツ型資本主義」[フランクフルト発]九月二十二日の先進七カ国(G7)による協調介入にもかかわらず、外国為替市場でのユーロ安は是正に至っていない。しかし、この点だけをあげつらって「ユーロ圏経済の構造改革の遅れ」を取り沙汰するのは少々理屈が合わない。円高の日本が、ユーロ圏に比べ構造改革が進んでいるとは誰も言わないだろう。長引くユーロ安の主因は、ユーロ圏企業が合併・買収(M&A)などを通じて活発な対米投資を続けていることに伴う根強いユーロ売り・ドル買いの結果であり、ユーロ圏企業が攻めの経営でグローバル化対応を進めていることの反映と言える。「ユーロ安はユーロ圏経済が元気な証拠」とも言えるわけだ。 民間企業の動きに比べ大きく遅れていた政治の分野でも、七月のドイツの税制改革成立を機に、改革の波が広がろうとしている。福祉見直しや雇用制度の規制緩和で先行した北欧、オランダなどの小国を追いかけて、ユーロ圏最大経済規模のドイツでも、高福祉、高税率の見直しが始まってきた。ドイツ統一から十年、旧東独への公共投資、社会福祉肩代わりで「空白の一九九〇年代」を余儀なくされたドイツに、ようやく八〇年代後半以来の活気が戻ってきつつある。

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