在米日本大使館

執筆者:藤村幹雄2000年10月号

日本の“生命線”である日米関係。その最前線に位置する在ワシントン日本大使館。百五十名を超える日本人スタッフを擁する最大最強の在外公館の内幕とは――。 ワシントン北西部の住宅街、ネブラスカ通りにある駐米日本大使公邸は、日本人の住居としては最高の居住環境を誇る。広大な敷地、テニスコートと水泳プール、日本庭園、瀟洒な建築――。一九七七年に完成した公邸は、ワシントンの各国大使公邸でも一、二を争う豪華さだ。 この大使公邸で今年五月三日、ユダヤ系米国人ばかり約六百人を集めて開かれたレセプションは、「日本の対ユダヤ・ロビー活動」とワシントンの外交団の話題になった。 ワシントンのホロコースト博物館で同日開幕した元駐リトアニア領事代理、故杉原千畝氏の特別展を祝うもので、招待客には、長いヒゲ、黒の装束という正統派ユダヤ教徒の姿が目立ち、独特の雰囲気が漂った。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに迫害されたユダヤ人約六千人に日本通過ビザを発給して命を救った杉原氏は、本省の命令に背いたとして戦後辞職に追い込まれ、杉原家は外務省に批判的だった。しかし、レセプションには夫人の杉原幸子さんら家族も出席。柳井俊二大使はスピーチで、「杉原氏の正義の行動こそ、日本外務省の誇り」と称賛、外務省と杉原家の完全和解を印象付けた。

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