金大中大統領ノーベル平和賞受賞秘話

執筆者:西川恵2000年10月号

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のナンバー2、金永南・最高人民会議常任委員長ら北朝鮮代表団が九月五日、国連ミレニアム総会出席のためドイツ・フランクフルト空港で、米アメリカン航空のニューヨーク行きに搭乗しようとした時に騒ぎは起きた。アメリカン航空の職員が「北朝鮮はテロ支援国家に指定されている」と、手荷物検査とボディーチェック、さらに靴と上着を脱ぐよう要求したのである。 代表団はこれを拒否し、国連総会出席を取り止めた。フランクフルト空港で記者会見した代表団は「米航空職員は我々を犯罪者のようにとり扱った」「米国側の不正な妨害工作によって国連総会を欠席し、帰国することを余儀なくされた」と米政府を非難した。 一方の米政府は、北朝鮮代表団がフランクフルトでアメリカン航空に乗り換えることを知らされておらず、空港に「世話役」を派遣することが出来なかったと釈明し、北朝鮮に「深い遺憾」の意を伝え、事実上、謝罪した。 この米朝のやりとりを複雑な思いで見つめていたのは韓国だった。韓国の金大中大統領と金永南・最高人民会議常任委員長は、国連本部で南北首脳級会談を行う予定になっていたからだ。もし実現すれば、六月の南北首脳会談に続き、国連ミレニアム総会という願ってもない檜舞台で、南北融和を世界に誇示する絶好の政治的イベントになったはずである。

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