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執筆者:伊藤洋一2000年10月号

 ニューヨーク市場でハイテク株の弱さが目立つ。「会社がもう危ない」と発表したわけではない。「市場の予想ほどには業績は良くない」と情報開示しただけなのだ。なのに、アップルの株価は九月二十九日のニューヨーク市場で、たった一日で前日より二七・七五ドルも下げて二五・七五ドルとなった。下げ幅は実に五二%。市場全体を揺るがしたアップル・ショックである。 悪いといっても、かつてだったらあまり深刻には捉えられなかった程度の業績予想で株価が大きく下げる局面が続いている。アメリカでは、企業が業績の正式発表の数週間前に見通しを発表する。四半期ごとに巡ってくるそれを「confession season(告白の季節)」と呼ぶ。今年は景気鈍化見通しが強まる中で、市場の予想を下回った会社が多かった。アップルだけではなく、その度に多くの有力企業の株価が従来の常識を超えて下げた。インテルもそうだ。七%の減益見通しなのに、株価は一日で二二%も下げた。「ユーロ安、原油高など経済全体を揺るがす要因を背景に減益を発表している会社が多い」「バリュエーションから見て、割高な銘柄が多かった」「著名な会社が市場予想を下回る業績を発表して、市場を動揺させた」――などが挙がっている理由。北米のパソコン市場には飽和説もある。ハイテク株の下げは、ニューヨークのみならず世界市場全体を不安定にしている。少なくとも、ハイテク“株”ブームは、著名ハイテク銘柄の脆弱性が露呈される中で終わりつつある。ハイテクもレグテク(regular technology)になるのだ。

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