中国ノンバンク処理で無力だった邦銀

執筆者:津村貴大2000年10月号

翻弄される日本勢を尻目に、したたかに食い込んだ欧米系企業[香港発]債権放棄の嵐が吹き荒れている。といっても日本のゼネコンや百貨店の話ではない。舞台は中国。国際信託投資公司(ITIC)と呼ばれる中国のノンバンクが相次いで外国銀行に事実上の“借金踏み倒し”を宣言しているのだ。「債務の五割カットか、十年間の返済繰り延べか。どちらかの案にサインして欲しい」。八月末、香港のホテルに集まった百三十を超える外国銀行の代表者を前に、大手会計事務所のプライスウォーターハウス・クーパースの担当者はこう切り出した。同社は中国広州市傘下のノンバンク、広州国際信託投資公司の財務アドバイザー。この日、広州ITICの債務処理案が債権銀行に正式に提示されたのである。 広州ITICの対外債務は約十億ドル。債権者の上位リストには、第一勧業銀行や富士銀行の香港支店をはじめとする大手邦銀、日商岩井の香港現地法人なども名を連ねる。大幅な債務超過に陥っている広州ITICの債務処理交渉は実は一年越しで、邦銀などは全額返済を唱え続けてきた。 ところが、正式に示された処理案はそんな主張を鼻先で笑い飛ばす内容でしかない。「十年も待てる銀行があるとは思えない。かといって五割カットを受け入れるわけにもいかない」。邦銀関係者は憤りを隠さないが、もはや全額返済は夢物語に過ぎなくなっている。

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